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医療コラム(漢方内科):冷房病(クーラー病)には漢方薬

猛暑が続きますが、体調は大丈夫でしょうか?

暑くて食欲がないし、だるくて何もできないという人は、前回の夏バテの話を参考にしてください。

今回は、冷房病(クーラー病)の話です。

最近、漢方内科外来には「冷房の効いた部屋にいると体調が悪くなる」「オフィスで足腰が冷えて辛い」といった相談が増えています。

あなたも、冷房が効きすぎた環境で、肩こりや頭痛、だるさを感じたことがあるのではないでしょうか。

冷房病(クーラー病)とは

冷房病(クーラー病)は、冷房による過度の冷えが原因で起こる体調不良の総称です。

主な症状には、肩こり、頭痛、倦怠感、手足の冷え、胃腸の不調、不眠などがあります。

漢方医学では、これらの症状を「寒邪(かんじゃ)」による気血の流れの悪化と捉えます。

現代のオフィス環境では、外気温との差が大きすぎることが多く、体の調節機能が追いつかなくなるのです。

冷房病(クーラー病)にぴったりの漢方薬があります

それは「五積散(ごしゃくさん)」です。

五積散は、その名前が示すように「五つの積」、つまり気・血・痰・食・寒の五つの滞りを改善する処方です。

特に「寒の積」、すなわち体内にこもった寒邪を温めて発散させる働きに優れています。

五積散には、体を内側から温める生薬と、気血の巡りを良くする生薬がバランス良く配合されています。

冷房によって体表に溜まった寒邪を発散させながら、同時に胃腸を温めて消化機能を改善します。

また、肩こりや頭痛の原因となる気血の滞りを改善する作用もあります。

継続して服用することで、冷房環境に対する体の適応力が向上します。

体を冷やしすぎることの弊害

確かに暑い夏には冷房は必需品ですが、冷やしすぎは禁物です。

漢方医学では「過ぎたるは及ばざるが如し」と考えます。

体を冷やしすぎると、血管が収縮して血流が悪くなり、かえって疲労物質が蓄積しやすくなります。

また、胃腸の働きも低下して、消化不良や下痢を起こしやすくなります。

自律神経のバランスも崩れ、不眠や精神的な不調にもつながります。

日常生活での冷房対策

まず、室内外の温度差を5℃以内に保つよう心がけましょう。

職場で調整が難しい場合は、薄手のカーディガンや膝掛けを活用してください。

足元の冷えを防ぐため、靴下の重ね履きや足首ウォーマーも効果的です。

食事では、冷たい飲み物や食べ物の摂りすぎに注意が必要です。

温かい飲み物や体を温める食材(生姜、ネギ、ニンニクなど)を積極的に取り入れましょう。

また、ぬるめのお風呂にゆっくり浸かって、一日の冷えをリセットすることも大切です。

軽い運動やストレッチで血行を促進することもお勧めします。

それでも、冷房病(クーラー病)の症状が辛いときは、漢方専門医にご相談ください

五積散が万能というわけではありません。

体質によっては、他の処方の方が適している場合もあります。

例えば、もともと冷えが強い体質の人には「当帰四逆加呉茱萸生姜湯(とうきしぎゃくかごしゅゆしょうきょうとう)」が良い場合があります。

また、胃腸が特に弱い人には「人参湯(にんじんとう)」系の処方を選択することもあります。

漢方医学では、同じ冷房病でも、その人の体質や症状の現れ方によって、最適な処方が変わってきます。

つらい冷房病の症状でお困りの方は、体質に合った適切な漢方薬について、ぜひ漢方専門医にご相談ください。

 

漢方未病治療センター長 喜多敏明