辻仲病院柏の葉 | 千葉県柏市 | 大腸内視鏡検査・痔の治療

医療コラム(漢方内科):春のストレスと「のどのつかえ」〜検査で異常がない喉の違和感は「気」の滞りかもしれません〜

3月に入り、日差しも春めいてきました。
卒業、進学、異動、引越し……。この時期は、環境が大きく変わる季節でもあります。

期待と不安が入り混じるこの時期、私の漢方外来には、ある「奇妙な症状」を訴える患者さんが増えます。

「風邪でもないのに、喉に何かが詰まっている感じがする」
「飲み込みにくいけれど、食事は普通に通る」
「イライラすると、喉が締め付けられるように苦しい」

心配になって耳鼻科で検査を受けても、「何も異常はありません」「逆流性食道炎かもしれませんね」と言われてしまう。
しかし、胃薬を飲んでも一向に良くならず、不安ばかりが募っていく……。

あなたも、そんな経験はありませんか?

漢方医学では、この不思議な喉の違和感を、古くから「梅核気(ばいかくき)」と呼んでいます。
まるで梅の種(核)が喉に引っかかっていて、飲み込んでも下りず、吐き出そうとしても出ない状態に例えた言葉です。
現代医学では「ヒステリー球」や「咽喉頭異常感症」と呼ばれることもあります。

<原因は「気」の滞り>

なぜ、何もないはずの喉に「梅の種」を感じるのでしょうか?
その正体は、漢方でいう「気(き)」の滞りです。

「気」とは、目に見えないエネルギーや情報の流れのこと。
健康なとき、気は全身をスムーズに巡っていますが、ストレスや緊張、不安を感じると、巡りが悪くなって停滞してしまいます。
これを「気滞(きたい)」と呼びます。

特に3月から4月にかけては、激しい寒暖差や環境の変化によって自律神経の働きや情緒が乱れやすく、気の巡りも悪くなることが多いのです。

その結果、行き場を失った気が喉のあたりでギュッと固まり、それが「詰まった感じ」として現れるのです。
ですから、検査で形のある異常(ポリープや腫瘍)が見つからないのは当然なのです。

<「気」を巡らせて喉をスッキリさせる漢方薬>

このような「梅核気」の特効薬として有名なのが、「半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)」です。

この漢方薬には、不安や緊張を和らげる「厚朴(こうぼく)」や、喉のふさがり感を取る「半夏(はんげ)」、気分をスッキリさせる「蘇葉(そよう=シソの葉)」などが配合されています。

服用すると、滞っていた気がサーッと流れ出し、喉のつかえが取れるだけでなく、不思議と気分も晴れやかになります。
また、咳払いをしたくなるような咳や、緊張するとお腹が張るようなタイプの方にもよく効きます。

<春の「気滞」を解消する養生法>

漢方薬と合わせて、日常生活でも気を巡らせる工夫をしてみましょう。

1. 香りのある食材を取り入れる
シソ、ミント、柑橘類(ゆず、レモン)、セロリ、春菊など、香りの強い食材には、気を巡らせる働きがあります。
ハーブティーやアロマテラピーも効果的です。

2. ため息は我慢しない
「ため息をつくと幸せが逃げる」と言われますが、漢方医学的には逆です。
ため息は、身体の中に溜まった悪い気を外に出そうとする自然な防衛反応です。辛い時は、深呼吸をするつもりで、大きく「はぁ〜っ」と息を吐き出してください。

3. 軽い運動で発散する
じっと考え込んでいると、気はますます停滞します。
天気の良い日は外を散歩したり、ストレッチをしたりして身体を動かすと、気の巡りが良くなります。

「喉のつかえ」は、身体からの「少し頑張りすぎていませんか?」というサインです。
検査で異常がないからといって、我慢する必要はありません。

環境の変化で心が疲れやすい季節。
喉の違和感や、原因不明の息苦しさを感じたら、一人で悩まずにぜひ漢方専門医にご相談ください。
漢方の力で、心も喉もスッキリさせて、新しい春を迎えましょう。

 

漢方未病治療センター長 喜多敏明