辻仲病院開設30年史
1988年(昭和63)
1988年9月7日 東葛辻仲病院開設
創設者辻仲康伸は、千葉県我孫子市に大腸肛門疾患と消化器内視鏡に特化した専門病院「東葛辻仲病院」を開設しました。当初は個人病院であり、診療科は胃腸科と肛門科、病床数は54床でした。
当時の我孫子市はまだ人口も少なく、病院周辺の多くを畑に囲まれたなかでの病院開設は、大きな挑戦でした。医師は、辻仲康伸院長含め3名、初日の外来患者は6、7名というスタートでした。
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東葛辻仲病院は、アーチ形のバルコニーや吹き抜けのロビーが印象的なデザイン性の高い建物、ジャグジー付きの展望大浴場、病院特有のにおいがしない病棟など「病気だけでなく、心も癒される快適な空間」をコンセプトに建設されました。
診療内容の特性上、患者さんのプライバシーには特に配慮し、病室入口に名札を掲示しませんでした。病院食らしくない美味しい食事をデイルームで患者さん同士が談話しながら召し上がれるのも特徴でした。
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また、辻仲康伸院長は、「病院=ホスピタル」が「客人へのもてなし」を意味するラテン語を語源とすることに鑑み、今日では当たり前となっている「医療はサービスである」という考えのもと、「最高の医療サービスを、真心を込めて提供する」ことを病院の理念としました。
また、職員にもやさしい病院であることが、患者さんに対して家族のように親身になって行うケアやサービスの向上に繋がると考え、残業が少なく、有休や産休育休が取得しやすく、仕事と家事育児を両立できるなど、働きやすい環境を整えました。
こうした病院づくりの精神は、今の辻仲病院グループ全体に受け継がれています。
辻仲病院グループロゴマーク
創設者が考案したこのロゴマークは、辻仲の「t」「つ」を組み合わせることで「ハート(真心)」や「おしり(専門性)」を記号化したものであると言われており、今日まで、辻仲病院グループの精神を示すマークとして使用され続けています。
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4SC制定
病院開院とともに制定された4SC(Smile優しく微笑む,Sincerity真心を込めて,Speedすばやく対応,Serviceお役に立って喜ばれる,Clean清潔に、快適に)は、患者満足度向上のため、職員全員が常に実践に努めてきた基本方針です。
このような基本方針を定め、朝礼などで唱和することは、病院としては当時珍しく、創設者の先進性が見られるところです。
この基本方針は時代の変化に対応し少しずつ形を変えながら、辻仲病院柏の葉開設時より、国際水準の医療を提供したいという想いを込めて「Internationality」が追加された5SCIとなっています。
大腸肛門病教室開催
開院より患者さん向けの公開講座「大腸肛門病教室」を毎週金曜日に院内で開催、辻仲康伸院長みずからが患者さんとの交流の中で病気や治療法についての解説を行い、毎回好評をいただきました。電話相談や患者アンケートを行うなど、常に患者さんの目線に立った病院運営を目指しました。
なお、退院指導のときは、院長と患者さんたちとがテーブルを囲み、ノンアルコールワインで乾杯して触れ合いをしながら退院を祝うなど、ユニークなアイデアもありました。
1995年(平成7)
日本大腸肛門病学会専門医修練施設(現在の日本大腸肛門病学会認定施設)認定
下部消化管に特化した学会である日本大腸肛門病学会の専門医修練施設として認定されました。これは大腸肛門病に関する検査数や手術数において実績があり、専門医による指導体制がとられていることを意味します。
1997年(平成9)
内視鏡検査の拡充
検査予約数の増加に伴い、内視鏡稼働台数を増設、新たにERCP(内視鏡的逆行性胆管膵管造影)、EUS(超音波内視鏡)を開始しました。また、最新のガイドラインに従い、内視鏡の消毒法を見直しました。
職員には消化器内視鏡技師の資格取得を奨励しており、当時の病院の規模としては多い7名の資格者を抱えていました。
現在の辻仲病院グループにおいても、消化器内視鏡技師の資格者が多数おり、看護部では院内研究会、勉強会を定期的に開催するなど、グループ全体を挙げて内視鏡診療の質向上に常に努めています。
1998年(平成10)
1998年5月 東葛辻仲病院 クローバー館開設
東葛辻仲病院開設10周年でもあるこの年、新たにクローバー館を増築し、病床が54床から104床となりました。当初の建物はハート館と名付けられ、各館の2階、3階同士が渡り廊下で繋がれました。
これを機に中央手術室や検査センター、CTスキャンや肛門内圧計などの設備をさらに充実させ、外来手術室を設けたことで痔の日帰り手術を行えるようになりました。また、内視鏡の台数もさらに増設し、自動洗浄装置を採用するなど、検査の増加に備えました。
また、肛門科の手術や内視鏡検査を受けられた全ての患者さんに満足度調査アンケートに協力していただき、その集計結果をもとにランキング形式で医師の技術評価を行うなど、医療サービスの質を維持向上することに努めました。
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病院ホームページ開設
IT時代にすばやく対応し、開設した病院ホームページ「gpro.com(痔プロドットコム)」は、創設者がサイト名を考案し、大腸肛門病分野の情報を満載したポータルサイトとしてアクセス数を伸ばしました。
同時にメールでの相談受付も開始し、遠方でなかなか来院できない方などからの相談に、辻仲康伸院長みずから回答しました。このサービスは、リニューアルにより「バーチャル診察室」として引き継がれています。
また、ホームページ上で質問に対し選択肢を選ぶことで簡易な診断を受けられるなど、新たな試みが盛り込まれていました。
1999年(平成11)
1999年7月 医療法人社団康喜会設立
東葛辻仲病院を法人化し、「医療法人社団康喜会 東葛辻仲病院」が誕生しました。理事長となった辻仲康伸は、院長職を兼務することになりました。
「康喜会」という名称は、創設者が命名したもので、自分の名前の「康」と健康の「康」を喜び、また「康喜」は「高貴」と同音でそれに通ずることなど意味しています。
Wexner博士訪問
米国での大腸腹腔鏡手術の最高権威であるSteven D. Wexner博士(Cleveland Clinic Florida)が当院を訪れ、講演を行いました。講演会には大学病院の大腸腹腔鏡の専門家が当院に集まり、活発な議論を行いました。
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PPH導入
イタリアのLongo博士が外科手術に使われる自動吻合器を痔核治療にも応用することを発案し、1993年に初めて施行したPPH(Procedure for Porolapse and Hemorrhoids)。東葛辻仲病院では国内での認可に伴い、痛みや出血の少ない痔核治療法としていち早く正式採用しました(2008年4月より保険適用)。
PPHの普及を歓迎する半面、従来手術の経験を積んだ術者による正確な見立てが不可欠という辻仲康伸理事長の考えのもと、PPHweb研究会ホームページを開設しました。
PPHによる治療法の改良を目指し、適応の紹介や、具体的な手技や合併症、経過観察などの情報を公開し、経験の共有を図りました。また、他院から医師の手術見学も受け入れ、PPHの普及と発展に努めました。
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2000年(平成12)
2000年12月 アルト新橋胃腸肛門クリニック開設
辻仲病院初のサテライトクリニック「アルト新橋胃腸肛門クリニック」が、東京都港区新橋駅前に開設されました。山手線沿線というアクセスのよい環境で、肛門科および内視鏡検査の専門性の高い医療を提供しています。
「アルト」とは「Anal Rectum Treatment」の略称で、大腸肛門診療のことを意味しており、辻仲病院グループのなかで、唯一「辻仲」がクリニックの名称に含まれていません。
開設当初は、待合室に間接照明で照らされた巨大な水槽があるなど、都会的な雰囲気づくりがされていました(患者さんが増えるにつれ待合室が手狭となり、現在は撤去されています)。「サラリーマンの聖地」と呼ばれる新橋駅前の立地上、比較的若い患者さんを中心にご来院いただいております。
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2001年(平成13)
東葛辻仲病院広報誌「Tsujinaka News」創刊
辻仲病院が近隣地域に根差していく一環として、広報誌「Tsujinaka News」を発刊、配布を開始しました。
病院の案内や病気の解説、治療に役立つ情報や行事など、その時々の話題を取り入れて紹介していました。現在でも、各病院での積極的な広報活動が行われています。
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2002年(平成14)
病院機能評価認定
より質の高い医療サービスを提供するため、第三者機関 公益財団法人日本医療機能評価機構による審査・評価により一般病院Aの認定を受けました(2007年に更新、現在は、辻仲病院柏の葉で認定中)。
クリニカルパス導入
クリニカルパスとは、入院中の手術、治療、検査、食事制限、安静度、入浴などを標準的なスケジュール表にまとめたものです。
患者さんにとっては、入院中の行動の流れを十分に理解し、安心して入院生活を送れるものとなり、また、チーム医療に役立ち医療の質や安全の向上に繋がります。辻仲病院では、まずポリープ切除の患者さんを対象として運用を開始しました。
2004年(平成16)
ISO9001認証
病院機能評価認定に引き続き、医療の質の確保、医療安全管理、患者満足度向上を目的として、医療サービスの質を継続的に改善する仕組みを確立するため、品質保証の国際規格であるISO9000シリーズの認証を取得しました(2006年に更新、現在は認証なし)。
病院等の医療機関がISO9001認証を取得することは、当時も今も珍しいようです。
電子カルテ導入
情報技術が向上する情勢の中で、更なる患者サービスの向上を目指し辻仲病院でも電子カルテを導入しました。業務の効率化や、紙カルテ運用ではできない機能による質の高い医療の提供が可能になりました。
辻仲病院では、肛門科の手術記録や内視鏡検査記録で絵図を多用するため、電子カルテが比較的苦手とするキーボードを使わないタッチペンによる入力が快適に利用できる仕様としました。
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患者数累計10万人到達、ホームページ累計アクセス50万超
2005年(平成17)
北京海淀長青肛腸医院院長訪問
北京海淀長青肛腸医院の院長、韓宝先生が当院を訪れ、中国の史兆岐教授らが1970年代に開発した痔核に対する注射薬「消痔霊」についての講演会を行いました。
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ALTA治療導入
ALTA(硫酸アルミニウムカリウム・タンニン酸注射液)は、脱出を伴う内痔核の新しい硬化療法で、「消痔霊」をもとに改良された治療薬です。2005年3月から臨床使用が可能となり、痔核治療に「切らずに治す」という選択肢が加わることになりました。
『痔っとガマンするな!』出版
辻仲康伸理事長による著書『痔っとガマンするな!』は長年痔に悩んでいる方や受診に抵抗がある方に向け、雑学等も交えながら病気の解説やお尻の機能・仕組みについてわかりやすく書かれており、好評をいただきました。現在も院内売店にて購入することができます。
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経鼻胃内視鏡開始
千葉県で初めて経鼻胃内視鏡を導入しました。鼻から内視鏡を挿入するため、咽頭反射が起こらず、検査時の苦しさが大幅に軽減されました。
日本消化器内視鏡学会指導施設認定
年間大腸内視鏡検査件数1万件、手術件数4千件突破
2006年(平成18)
2006年10月 辻仲柏クリニック開設
増え続ける内視鏡検査に対応するため、2つめのサテライトクリニックとして、内視鏡専門のクリニック「辻仲柏クリニック」をJR柏駅前東口に開設しました。東葛辻仲病院でトレーニングを積んだ内視鏡専門医が検査を担当し、確実で安全な検査・治療を提供しています。
ビルの中のクリニックと思えないほどゆったりとしたスペースを活かして、更衣室やトイレ、検査着で過ごす検査待合室が男性用と女性用で完全に分かれたつくりとなっており、そのコンセプトは、後に建設される辻仲病院柏の葉の内視鏡センターの設計にも影響を与えました。
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第1回CCFシンポジウム(後のCDST)開催
以前より辻仲病院と交流の深い米国クリーブランドクリニックのWexner博士を始め、国内外の著名な研究者を招き交流を深めるとともに、最新の手術技術や治療法、症例報告について議論・情報交換を行うことを目的として、辻仲康伸理事長が世話人となり銀座の時事通信ホールにてシンポジウムを開催しました。
アジア各国や国内の消化器・大腸肛門病学のエキスパートが集結したこの国際学会は震災の年を除き2014年まで、毎年夏に開催されました(第2回よりColorectal Disease Symposium in Tokyoに改称)。また、第4回から若手大腸肛門医の育成を目的とした症例報告会を同時開催することになりました。
これらのセミナーは、司会、進行も含め全て英語で行われました。当シンポジウムの記録は、こちらでご覧いただけます。
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2008年(平成20)
辻仲病院グループ20周年
東葛辻仲病院開設から20周年となったこの年、新病院「辻仲病院柏の葉」の建設が始まりました。
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2009年(平成21)
2009年6月1日 辻仲病院柏の葉開設
千葉県柏市のTX柏の葉キャンパス駅前に、198床の新病院「辻仲病院柏の葉」を開設しました。新病院では、「胃・大腸とともに骨盤臓器全体を診る」をコンセプトに婦人科、泌尿器科等を新たに追加し、これまでの実績を礎に新しいスタートを切ることとなりました。
新病院の院長は、辻仲康伸理事長が兼務し、新病院が辻仲病院グループの本院となりました(東葛辻仲病院は、104床から56床に)。
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柏の葉地区では、過去にゴルフ場等があった土地に、大規模なまちづくり計画が進められていましたが、当時、駅周辺には、ららぽーと柏の葉と数棟の高層マンションがあるだけでした。
その後、更にマンション建築や銀行、大学の研究施設などの運営が予定されていましたが、まだ更地が目立つ場所であり、それらの先駆者として運営を開始することになった辻仲病院にとって、「東葛辻仲病院」開設以来、再びの大きな挑戦となりました。
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建物の外観、内装は、ホテルと間違われるくらい病院離れしたつくりとなっており、東葛辻仲病院のコンセプトである「病気だけでなく、心も癒される快適な空間」が、より進化し、新たなかたちとして実を結びました。
また、外国人留学生・研究者が多くみられる柏の葉地区の特性と、「国際水準の医療を提供する」という基本方針にのっとり、英語を併記した看板、サインが特徴となっています(現在は、見やすさを重視して、日本語のサインを増やしております)。
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医学の父、ヒポクラテスの言葉
辻仲病院柏の葉の正面玄関には、医学の父、ヒポクラテスの言葉がギリシャ語で書かれています。
「医学を極めるにはあまりにも、医者の一生が短すぎる。医者は常に術を伸ばすことを考えなければならない」という意味であり、辻仲康伸理事長の医学に対する想いに通じています。
正面玄関を入ってすぐのホスピタルコリドーの柱の梁にも同じ言葉がラテン語で書かれています。
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2010年(平成22)
辻仲病院柏の葉 開設1周年記念市民セミナー開催
辻仲病院柏の葉1周年を記念し、地域住民の方々との交流も兼ね、さわやか千葉県民プラザにて市民セミナーを開催しました。
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映画「酔いがさめたら、うちに帰ろう」に辻仲康伸理事長と職員が出演
ドラマやCM等の撮影協力をしていた辻仲病院柏の葉でしたが、映画「酔いがさめたら、うちに帰ろう。」に辻仲康伸理事長が医師役、台詞付きで出演することになりました。主人公(俳優・浅野忠信氏)が、内視鏡検査を受け医師から説明を受ける重要なシーンであり、当院の施設を使用して撮影し、理事長と一緒に出演した数名の職員達からも、緊張感が伝わってきます。
辻仲康伸理事長は、医療監修、実技指導も行いました。
2011年(平成23)
大腸肛門病ハンドブック出版
辻仲病院グループがその専門性の中で20年以上にわたり培い、高めてきた技術・ノウハウを結集させ、多くの臨床外科医の指針となるように、専門書「大腸肛門病ハンドブック」を出版しました。
執筆には辻仲病院の医師に加え、それぞれの領域でのエキスパートである先生方のご協力を得ることができ、充実した内容となっています。
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2012年(平成24)
2012年6月 辻仲つくば胃腸肛門クリニック開設
茨城県つくば市に、3つめのサテライトクリニックが誕生しました。辻仲病院グループの肛門科診療、大腸内視鏡検査の豊富な実績をもとに、自然に恵まれた研究学園都市の中心地で専門性の高い治療を提供しています。
茨城県には、肛門科、大腸内視鏡検査の専門クリニックは少なく、遠方から診療にかけつける患者さんが多数いらっしゃいます。
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2013年(平成25)
辻仲病院柏の葉 市民向け公開講座の充実
辻仲病院をもっと知ってもらいたい、地域の皆さまのかかりつけに、という思いから、市民公開講座を充実させてきました。現在も、大腸肛門病だけでなく緩和ケアや漢方内科、生活習慣病など、様々な講座を定期的に開催しています。
2015年(平成27)
辻仲病院柏の葉 病院機能評価認定
辻仲病院柏の葉が公益財団法人日本医療機能評価機構による審査・評価により一般病院1(3rdG:Ver.1.0)の認定を受けました。
2015年3月 浜畑幸弘副院長が、辻仲病院柏の葉の新院長に就任
新院長をはじめ辻仲病院グループの全ての職員は、創設者辻仲康伸の精神を受け継ぎ、これからも、「最高の医療サービスを、真心を込めて提供する」ことに努めてまいります。
辻仲病院柏の葉 緩和ケア病棟開設
新たに緩和ケア病棟を開設しました。24床が全て個室となる辻仲病院らしいホテルのような快適で清潔な病棟居住スペースを備えています。患者さん一人ひとりやそのご家族に寄り添うケアを実践し、大切な時間を過ごしていただけるようお手伝いしています。
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2016年(平成28)
辻仲病院柏の葉 メディカルツーリズム開始
基本方針である「国際水準の医療を提供すること」の一つのかたちとして、辻仲病院柏の葉が経済産業省により「医療滞在ビザ」の身元保証機関に認定されました。辻仲病院柏の葉では、診療を目的として訪日する外国人の受け入れを積極的に行っています。
東葛辻仲病院 経鼻内視鏡専用フロア開設
東葛辻仲病院ハート館に経鼻内視鏡検査専用フロアを開設しました。「鼻からの胃カメラ」に特化した食道がん・胃がん健診を実施し、より苦痛の少ない安楽な検査を提供します。
2017年(平成29)
開設30周年を目前にした辻仲病院グループの概況
辻仲病院グループ全体の年間診療実績(2016年度実績)外来患者延べ数 | 197,316人 |
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内視鏡検査件数 | 50,314件 |
入院患者延べ数 | 50,727人 |
手術件数 | 3,956件 |
常勤医師 | 35人 |
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看護師・看護助手 | 263人 |
コメディカル・事務員他 | 222人 |
合計 | 520人 |