炎症性腸疾患(IBD)

豊富な診断・治療実績、肛門疾患との合併にも対応可能

炎症性腸疾患とは

炎症性腸疾患(以下、IBD)とは、小腸や大腸に慢性的な炎症を起こす疾患であり、現在もはっきりした原因は不明で根本的な治療法がない難病です。大部分は潰瘍性大腸炎とクローン病といわれる病気で、比較的若い年齢(10代~30代)で発症することの多い病気ですが、中年以降になって初めて診断されることもあります。

症状としては、粘血便、血便が主で、下痢、腹痛、発熱、体重減少、嘔気・嘔吐、貧血であり、症状が悪くなったり、良くなったり(寛解)を繰り返すことが多いです。

IBDの診断

当院では、大腸・肛門外科医、消化器内科医が消化器全般の診療を行っており、その中でIBDと診断される患者さんは、開院以来増え続けています。

下痢や血便などの症状を契機に発見されることが多いですが、検診異常をきっかけに行った二次検査で偶然発見されることもあります。IBDは、患者さんごとに重症度や病変の範囲が異なるため、診断が難しい病気です。

また、肛門疾患を合併することも多く、痔瘻や裂肛だと思って当院を受診して、初めてIBDであることが分かった患者さんも多く見られます。

当院では、肛門疾患に対する専門性を活かして、大腸内視鏡検査や小腸カプセル内視鏡検査だけでなく、MRI検査、肛門エコー(超音波検査)を用いることで、より細かな診断を行うことができます。

IBDの治療

IBDと診断された場合、内科的治療を中心に炎症を抑えることから始めます。まず、抗炎症薬の内服を行います。効果が不十分な場合は、次の治療方法を選択します。

  • 生物学的製剤(レミケード、ヒュミラなどの注射薬)
  • ステロイド内服薬
  • 免疫抑制薬
  • 血液浄化療法(治療機器を使用しGCAPやLCAPを施行)

外来治療が中心ですが、症状の程度により一時的に入院治療が必要になる場合もあります。重症な症例には、外科的治療(手術)も行っています。

IBDは同じように治療を継続していても、ある時突然症状が悪化することのある難しい病気です。症状悪化時にも速やかに適切な検査・治療を行い「寛解」を目指します。また、患者さん一人一人のライフスタイルやご希望に合った治療法をご提案しています。

医療費助成について

潰瘍性大腸炎とクローン病は、国の医療費助成制度の対象となる「指定難病」です。「指定医療機関」で「難病指定医」による確定診断を受け、認定されると「医療受給者証」が交付され、医療費の助成を受けることができます。

詳細は、電話でお問い合わせください(辻仲病院柏の葉 TEL:04-7137-3737(代))。

多職種によるチーム医療

多職種によるチーム医療で、長期に渡り生活の質を落とさない治療を継続できます。

多職種によるチーム医療

当院では、IBDに対して、医師による診療のみならず、定期的な栄養指導、服薬指導なども含めた管理栄養士、薬剤師、看護師、臨床工学技士、医療事務といった多職種によるチーム医療をご提供しています。

管理栄養士より

自分が食べられる許容範囲がわかると、食事の選択肢も広がります

IBDの治療は、長期にわたることが多く、食事制限が必要となることもあります。自分が食べられる許容範囲がわかると、食事の選択肢も広がります。当院では、管理栄養士が、食品選びの目安表を用いて寛解状態を維持するための食事や、活動期の食事の摂り方、排便コントロールなど経過に応じた食事のアドバイスを行っています。また、成分栄養剤(エレンタール)でつくるゼリーや飲みやすくする方法などの相談も行います。定期的に相談をする事で、患者さんの実践力が向上していきます。ぜひ、気軽に栄養相談を受けてください。

薬剤師より

薬にどんな効果があり、薬を飲まなくなると、どんなことが起こるのかを理解していると、継続して服用することの大切さがわかると思います

IBDの治療薬は様々あり、患者さんの病態に応じて選択していく必要があります。長期間の治療を受けていく中で、お薬を飲み続けることに負担を感じ、通院に対して億劫になることあるかもしれません。また、症状が治まっているからといって、病気が治ったわけではありません。自己判断でお薬を中止したり、減らしたりすると、症状が再び現れる可能性があります。

薬にどんな効果があり、薬を飲まなくなると、どんなことが起こるのかを理解していると、継続して服用することの大切さがわかると思います。IBDの治療は、患者さんの行動力、意欲なくして行えるものではありません。自分だけで悩まず、遠慮なく当院の薬剤師にご相談ください。

臨床工学技士より

当院ではGCAPとLCAPのどちらも施行可能です

(GCAP・GMA、LCAP)について

(左)GCAP / (右)LCAP

IBDでは何らかの原因で白血球の働きが活発過ぎる状態になり、それが腸の炎症を悪化させていると考えられています。血液浄化療法とは、血液からそのような白血球を除去することで炎症の改善を図る治療です。

この治療は両腕に針を1本ずつ刺し、そこから血液を取り白血球を吸着する機器に通して行います。治療中は、臨床工学技士等の専門スタッフが付き添い、患者さんや装置に異常がないか常に注意を払い、安心して治療を受けられる環境を心掛けています。

看護師より

患者さんを中心としたチーム医療を継続できるよう、「架け橋」となっていきたい

IBDの患者さんは年齢層が比較的若い方が多く、受験や就職、転職、結婚などライフステージの変化を迎えることが多い年代になります。当院に通院中の患者さんの中にも「就職したら残業が多くて、食事が思うように管理できない…」「忙しくなると疲れが溜まって体調が悪くなるけど、職場の人になかなか理解してもらえない…」「受験勉強が大変で体調を崩してしまった…」など、生活の変化に伴う悩みを持つ患者さんも少なくありません。

私たち看護師は、そうした患者さんをどのようにサポートすればよいか、医療チームで意見交換を行います。例えば、入院中の生活指導が本当に伝わったのか、食事管理に対する提案が効果的であったのか心配な患者さんに対して、退院後に外来看護師が声掛けをして再度専門スタッフと相談できるよう調整し、効果を得たという事例がありました。

患者さんを中心としたチーム医療を継続できるよう、「架け橋」となっていきたいと思っています。

診療実績

診療実績

年度 2019年 2020年 2021年 2022年 2023年
潰瘍性大腸炎
(来院延べ患者数)
5,288 5,135 6,230 6,886 8,722
クローン病
(来院延べ患者数)
1,341 924 1,513 2,293 2,741

 

IBD専門外来

IBDの専門的な診察・治療を希望される方は、当院の「IBD専門外来」を受診してください。

診療担当医表はこちらから

 
*IBD専門外来は、初診・再診とも予約制となっております。ご予約・変更については、電話予約センターをご利用ください。

 

セカンドオピニオン(IBDセンター)

IBDセンターでは、潰瘍性大腸炎・クローン病のほか、炎症性腸疾患関連疾患を対象としたセカンドオピニオンを受け付けております。

  • 担当医師は、竹内 健(消化器内科部長、IBDセンター長)です。
  • 実施日は、原則として、金曜日15:00~となります。


*セカンドオピニオン(IBDセンター)は、事前の申し込みが必要となります。詳細は、セカンドオピニオン外来をご覧ください。

各科お知らせ

PDF形式の文書閲覧について

Adobe Acrobat Reader DC のダウンロードはこちらから。 PDF形式の文書閲覧には Adobe Acrobat Reader が必要です。アドビシステムズ社より無償配布されておりますので、このスペース中のバナーをクリックしてリンク先からダウンロード願います。